2006年06月21日
与謝野晶子と童話、童謡 (与謝野晶子文芸館 その3)
与謝野晶子は短歌以外に多くの論評を残し、源氏物語をはじめとする古典文学の現代語訳化に力を注いでいました。
そんな中、子供達を楽しませたのが、晶子の作った、童話、童謡でした。
それらの中で、晶子は自分の子供達を登場させています。
例えば、童話「鬼の子供」では長男“光”を、童謡、「紙で切った象」の中では4男“アウギュスト”をといった具合に。
晶子が童話を作る上で、基本となったのは、自分の子供達に読み聞かせたい<おとぎ話>という事でした。
晶子が明治43年(1910年)に博文館から『おとぎ話少年少女』を出版した時、その冒頭の「はしがき」にこう記しています。
『自分の二人の男の子と二人の女の子とが大きく成っていくに従って、何かお伽噺が要るようになって参りました。』
そこで、始めのうちはこの頃新しく作られたお伽噺を読み聞かせていたのですが、晶子の考える、“子供をのんびりと清く素直に育てよう”“ひろく大きく楽天的に育てよう”という趣旨には合わないものが多く、結局自分で作る事にしたのです。
作られたお伽噺達は、明治40年(1907年)から『少女世界』『少女の友』『少女画報』等の雑誌に毎月連載されていきました。
いずれも短編のお話で割合易しい言葉で書かれています。
4月末に与謝野晶子文芸館を訪れた際には、「金魚のお使い」という絵本が展示されておりました。
そこでどうしてもどんなお話か知りたくなって、今回は2Fのミュージアムショップを探したところ・・・ありました!
『おとぎ話少年少女』そのままではありませんが、晶子の発表した童話達を新たにまとめ直した書籍が出版されていました。
題名も、<童話 金魚のお使い> です。で、もう1冊 <童話 環の一年間> という題名の本も置いてありました。
<金魚のお使い>の方は幼年向きのお話をまとめたもの、<童話 環の一年間
>の方は少年、少女向きの童話と随筆をまとめたものとなっています。
出版社は 和泉書院 税込価格はいずれも¥1529です。>
この日は<童話 金魚のお使い>の方だけを買いました。子供が生まれたら読み聞かせてあげるつもりです。
文章や内容は古そうですが、晶子が“子供に読み聞かせたい”というコンセプトで作ったものですから、きっと今でも通用すると思います。
あとは、読んであげる“お父さん”の腕次第ということでしょうか?
追記;こんなに子沢山だとさぞ大変だろうとは思っていたのですが、<金魚のお使い>の解説部分にこんな文章がありました。
以下、解説文より
当時の晶子は、<『みだれ髪』で名高い女流歌人>という華やかなイメージから、およそかけ離れた貧乏暮らしをしていました。
情熱的な恋の歌を載せた『明星』も百号で終刊になり、失意の日を送る夫との間がぎくしゃくすることもありました。
その父はうち打擲(ちょうちゃく)すその母は別れむと言ふあはれなる児等 寛
という歌が残っているくらいです。
けれど、(中略)お伽噺の中には、いかめしい中にもやさしい父親寛が度々描かれています。
両親がお互いに尊敬し、協力しあってつくっていく家庭が描かれるのは、(中略)大正期の作品を待たなければなりません。
やはり、どの家庭にも苦労があったようですね。
このことは、与謝野晶子文芸館では語られておりませんでした。
こんどは是非<環の一年間>も買ってみようと思います。