今日は芸術のお勉強です。(アール・デコ展開催記念講演会《アール・デコの時代》の報告についてのお話です。ぜひご覧下さい


2005年10月03日

今日は芸術のお勉強です。(アール・デコ展開催記念講演会《アール・デコの時代》の報告

題名にもあります通り今日のブログは、芸術についてのお勉強となります。
写真や絵の無いとても長い記事ですので、面白さには欠けますが、読んでからこの展覧会をご覧頂ければ、各展示品を見て感じることや考える事が多くなり、より印象に残る展覧会になるのでは?と、個人的に(勝手に)思っております。
それでは始まります。

アールデコ展チラシ10/1(土)PM6:00よりサントリーミュージアム天保山にて『アール・デコ展』(きらめくモダンの夢)の開催を記念した講演会が大阪湾が一望できる、5F展望ギャラリー内で行われました。
講師は美術評論家の 海野 弘 氏 でした。小柄ですが、真面目で素敵な雰囲気の方です。予定時間より若干遅れての開催となりました。

まず、アール・デコの成立からお話が始まりました。
アール・デコの始まりは1928年にフランスで開かれた工芸展覧会(装飾博覧会)だと言われています。
ただ、この時期には『アール・デコ』という言葉やカテゴリーは存在せず、実際には1960年代に始まった『アール・ヌーボー』の再評価に続き、アール・ヌーボーの「次の時代」という事で注目され、1960年代末頃になって確立されたカテゴリーだとのことです。

第一次世界大戦後から第二次世界大戦が始まるまでの間が<アール・デコの期間>とされています。
この時期に、現代の建築、デザイン、生活様式が確立されたと考えられています。

この『アール・デコ』という時代が生まれるに至った経緯としてはずせない2つの「キーワード」があります。

1つは《都市》、もう1つは《女性》です。

1920年代に「現代の都市」の基礎が確立され、同時にこの時期から「女性の社会進出」が目立ち始めました。

19世紀までの社会は<男性中心社会>で、女性は家庭に入り着飾るものでした。
また、日常の家庭内での生活においては、女性がお化粧をすることは少なく(過度の化粧をするのは“夜の世界の女”と見なされた時代でした)逆にこの時期の女性には、、自宅内でゆっくりとお化粧をする時間がありました。
ちょうどまだこのような環境化にあった19世紀末頃に女性的な曲線モチーフの『アール・ヌーボー』が花開いたのです。

この『アール・ヌーボー』スタイルを大きく変化させるきっかけとなったのが《第一次世界大戦の勃発》でした。

戦争により男達の多くが戦場へ借り出され(駆り出され)、男性の居なくなった<社会>を運営していく為に、否応無く女性が<男性社会の中>へ引き出されていきました。
屋内向けの美しい装飾と“ポン、キュ、ポン”のコルセット矯正されたスタイルの服装から
屋内外で様々な作業をする為の“短く動きやすい”服装へ、そして髪型もロングからショートカットへというどちらかといえば直線的なデザイン形態へと変化していきました。
これが『アール・デコ』誕生の引き金の一つです。
女性の社会進出は仕事面だけではありません。娯楽の世界、特にテニスに水泳、乗馬などスポーツ分野へも進出し始めました。
社会進出に伴い“男性の目”が気になり出した女性達に現代的な「ダイエット」が流行し出したのもこの頃が起源とされています。

また、“日常”、社会進出している為、それまでとは違い<外で>お化粧を直す必要性が生じてきました。
この要求により生まれてきたのが<コンパクト>、<リップスティック>等の《化粧道具類》、そしてそれらを入れておく<ハンドバッグ>、また、時間を知る為の<腕時計>も発達してきました。服装がシンプル化した分、ポケットも少なくなり、また身体を動かす事に伴い落とし易くなった事が原因となり、それまで特に男性に主流であった<懐中時計>は、常に身体にフィットする<腕時計>へとその座を追われて行きました。屋外でタバコを吸う事も多くなり<シガレットケース>や<ライター>といった嗜好品関連の商品もこの時期から急速に発達・普及して行きました。
これらは『アール・デコ』を語る上での重要なアイテムとなっています。

アール・デコの特徴として
/形悩燹新技術を積極的に取り入れた。
⊂霾鵝Φ蚕囘礎の発達により<世界同時的に発達>するスタイルが登場した。
が言われています。
この流れにより、アール・デコ時代の製品には世界中の様々な「モノ」や「技術」が融合されたものが多く見られるようになったのです。その1つが、日本の伝統技術<漆工芸>とシガレットケース、ライターといった<新しい時代の商品>とが上手く融合(今で言う“コラボレートされた”)された商品が作り出されたことであり、もう1つが、情報伝達と流通の発達により、今も続く『パリファッション、パリ・モード』が確立された事なのです。
「今年のパリ・コレはこれ!!」という情報はすぐに流通を通して世界に伝えられ、パリ、ロンドン、ニューヨーク、東京、世界の何処に行っても同じデザイン情報が広がっているという『世界が1つのデザインで繋がる』環境が成立しました。

『アール・ヌーボー』が自然をモチーフとした流れるような連なった「曲線デザイン」に終始したのに対し、『アール・デコ』は断続的とも言える「直線的デザイン」を特徴としていました。
とは言え、この時期さかんとなったエジプトや中南米の遺跡発掘調査によりもたらされたエジプトやインカ・マヤ文明の模様(文様)といったものもアール・デコのデザインに反映された、所謂時間枠を超えた「古代と現代の融合」が起こったのも『アール・デコ』の特徴と言えます。



ここで、よく“混同される”アール・ヌーボーとアール・デコの違いを比較して見ます。

    アール・ヌーボー               アール・デコ

・曲線的                        ・直線的
・手書きというか、ゆったりとした曲線が特徴  ・断続的というか、急激な直線が特徴
・新しさと、19世紀までの古さが混在した状態 ・「現代の始まり」を見せている
・草花や女性が主要なモチーフ
・平面的である(2次元的展開)          ・立体的である
・全体的につながりがある(植物的イメージ) ・非連続的(動物的=単独的イメージ)
・装飾により全体的に埋め尽くされる傾向 ・空白部分が多い(シンプルな装飾)

両者の持つ「装飾の華美」、「シンプルさ」という違いについてですが、アール・デコのシンプルさの中には<現代社会のせわしなさ>が反映されていると思われます。
アール・ヌーボーまでの「手作業主体による」生産形態から「機械による」生産形態への劇的な変化という流れがアール・デコ時代の製品にも影響・反映されているのではと想像されます。

さて、話は変わり、このアール・デコの時代は別名《JAZZ AGE》(ジャズエイジ)とも呼ばれています。この時期にオールドジャズが発達しました。この背景にはチャールストンやジルバといった動きの激しいダンスの流行がありました。そこにも社会進出を果たした女性の姿がありました。
その為でしょう、アール・デコにおけるデザインの中には「踊る女」のデザインが多く見られます。

最後に、アール・デコ時代に、当時の世界情勢を重ねて見ます。
最初に述べましたように第一次大戦後の1925年にパリで装飾博覧会を開催した事により、この分野ではフランスがリーダー的な立場に立ちました。
このとき、フランスは世界各国に参加を打診しましたが、ここで特筆すべき存在が、革命後のソビエトロシアの参加です。このとき初めて共産ロシアの前衛芸術が世界に向け大きく示されました。所謂「ロシア・アバンギャルド」です。
ここでは、ロシアの服飾デザイナー ソニア ドローネの服飾デザインが注目されたそうです。

これに対し、当時のアメリカは政府としてはこのイベントに参加しませんでした。どうやら当時のアメリカにはこの分野で披露出来るだけのものが無かったようなのです。
しかしながら、経済的な豊かさという点では、第一次大戦で国土が無傷だったアメリカはヨーロッパの復興景気によりこの頃大変景気がよく、“パリのアメリカ人”という言葉が残っているようにアメリカ国民はよくフランスに行き、最先端のアール・デコデザイン様式をその目で見、また、お金に物を言わせてどんどんそれらをアメリカ国内に持ち込んでいきました。
アールデコ展エントランス付近その結果として、アメリカ国内においても、1920年代後半から《米国型アール・デコ》が発展し始めました。
しかし、皮肉にも1929年にはアメリカを発端とする大恐慌が起こり、《米国型アール・デコ》はそれまでのヨーロッパ型の贅を尽くした高級・高価なアール・デコから、よりシンプルで安価な庶民的なアール・デコに方向を変えながら第二次大戦の始まる1939年まで発達して行きました。

このようにアール・デコは1929年を挟んで前半の高級なフランス型アールデコと後半に当たる1930年代の庶民型アールデコに大別する事が出来ます。

この時代の有名なポピュラー音楽家、コール ポータの歌詞に、この時代は“カクテルと笑いの時代”という表現が出てきます。
色々なものを混ぜ合わせて作る新しいタイプのお酒「カクテル」も、新旧問わず様々なエッセンスを融合させ発展してきた《アール・デコ》の時代精神を映したモノといえます。

この《アール・デコ》の流れは、先程述べましたように、1939年の第二次大戦勃発と共に、唐突に終焉を迎えました。
まるで“シャンパンカクテルの泡のように”あっけなく。そしてこの後1945年まで(それ以降もかもしれませんが)、アメリカ、そして世界は“カクテルと笑いの時代”を失い、《アール・デコ》も人々から忘れられていきました。。


ミュシャ展用写真1この《アール・デコ》展終了後、次の企画として、《アール・ヌーボー》の代表 アルフォンス マリア ミュシャ の作品展が開催されます。
発達した流れとしては逆行する形となりますが、両デザイン様式を比較する上での素晴しい組み合わせだと思います。
ぜひ、両方の展覧会に足を運び、ご自身の目でその違いを実感して見て下さい。

10/1当日、時間の都合で私自身今回の展覧会作品は全く見ておりません。改めて見に行く予定です。そのときの感想はまたの機会に書きたいと思います。



トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 観に行きたい美術展リスト(2005秋)  [ 備忘ブログ ]   2005年10月05日 01:28
まだまだ暑い日が続き 秋らしくないのですが、それはそれ。芸術の秋という事で行きたい美術展のリストを作ってみました。 最近、美術関連にご無沙汰なので、うまく美術館の雰囲気に入っていけるかちょっと心配です。 それではリスト開始! (あく
2. <サントリーミュージアム天保山>開催中の展覧会情報  [ artime −全国美術(アート)展覧会情報 ]   2005年10月06日 15:20
アールデコ展 会期:2005年9月15日(木)〜11月6日(日) 休館日:毎週月曜日(10月10日は開館) 入館料:大人1100円、高校生・大学生800円、小中学生450円 開館時間:午前10時30分〜午後7時30分 場所:〒552-0022 大阪市港区海岸通1-5-10 TEL:06-6577-0006 ホーム...

この記事へのコメント

1. Posted by water20@備忘ブログ   2005年10月05日 01:29
5 コメント&トラックバックありがとうございます。

本当に詳しい報告ですね。すごく参考になります。

私は、サントリーミュージアムの雰囲気が好きでよく行くのですが、一度も講演を聴いた事がありません。
この内容なら、一度ぐらい聴いてもいいかもしれないですね。
(講演の時間帯は、展示場に人が少なくなるので ゆっくり観られるチャンスでもあるのですが(笑)
2. Posted by とねっこ   2005年10月05日 13:48
コメントとトラックバック有難うございました。講演会の報告、参考になれば幸いです。サントリーミュージアムのHPでは次回の展覧会が近くなった頃から様々なイベントのお知らせが出されます。講演会などの情報もUPされたりしますので、時々ご覧になるとよいでしょう。『友の会』に入るのも手ですね。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
月別アーカイブ
スポンサードリンク
ブログ仲間さんの出版物
最新コメント